日 時
2020年9月2日(水) 10:30〜12:00
発表者
金森 大成 (名古屋大学宇宙地球環境研究所 研究員)
題 目
東シベリアにおける近年の夏季降水量の増加傾向に対する温暖化の影響
要 旨
東シベリアでは2000年代に夏季降水量が顕著に増加した.この原因として,地球温暖化によって北極海のユーラシア大陸側で夏季に海氷が大きく縮小したことが考えられている.一方,この地域の降水量と関係するサブポーラージェットの経年変動が近年変調していることも報告されている.しかしながら,降水量変動に与える両者の関係は未解明である.そこで本研究では,大規模アンサンブル気候実験データd4PDFを用いて,東シベリアの夏季降水量の増加に対する年々変動と長期変化傾向の影響を明らかにするための解析を行った.
夏季降水量の過去再現実験における線形トレンドのアンサンブル平均を見ると,東シベリアから極東域にかけて,1990–2010年の20年間に有意な夏季降水量の増加傾向が見られた.この変化傾向は観測データと整合的であった.一方,非温暖化実験のアンサンブル平均には有意な降水量増加傾向は見られなかった.また,メンバー間の線形トレンドの空間構造には大きなバラツキが見受けられた.そこで過去再現実験の100メンバーの降水量の線形トレンドにEOFを適用し,卓越する空間パターンの抽出を行った.その結果,EOF1では,東シベリアから極東域,およびモンゴルから東北アジアにかけて,南北に変化傾向の符号が逆転するパターン(南北パターン)が抽出された.EOF2ではシベリアにおける東西パターンが,EOF3ではサブポーラージェット上での波列パターンがそれぞれ抽出された.EOF1~3で抽出された空間パターンを用いて,PCスコアから東シベリアで有意に降水量の増加傾向を示すメンバーの抽出を行った.抽出されたメンバーの両実験における線形トレンドのコンポジット平均の差を見ると,EOF1では,非温暖化実験と比較して南北の気圧シーソーパターンが強化され,西シベリアからの水蒸気流入の増加が降水量の増加傾向に寄与していた.そしてEOF2では,シベリアにおける東西の気圧シーソーパターンが強化されることにより,EOF1と同様に西シベリアからの水蒸気輸送量が増加していた.一方,EOF3ではサブポーラージェットの変動に伴い,低緯度側からの水蒸気輸送量の増加が,東シベリアの夏季降水量の増加に寄与していることがわかった.
発表では近年の夏季降水量の増加傾向について,大気循環場の数十年規模変動との関係についても議論を深めたい.
