第5回PAWCs月例オンラインセミナー

日 時
2020年11月4日(水) 10:30〜12:00

発表者
小林洸太(名古屋大学宇宙地球環境研究所 水文気候学研究室 修士2年)

題 目
東シベリア・レナ川流域における冬季の河川流出量と永久凍土との関わり

要 旨
 環北極域では、1980年代以降冬季の河川流出量が増加傾向にある。従来、環北極域における河川流出量と融雪水との関係を調べた研究は多かったが、冬季の河川流出量と永久凍土との関わりについて研究した例は非常に少なかった。年間の河川流出量に占める割合は少ないものの、冬季の河川流出量は永久凍土との関わりを理解する上で重要であり、地球温暖化に代表される気候変動が永久凍土や河川流出に及ぼす影響を考察する上で非常に重要である。そこで本研究では、人為的なダムの影響が少なく、気候変動の影響が評価可能な東シベリア・レナ川流域を対象に、冬季の河川流出量と永久凍土との関わりを調べることを目的として解析を行った。解析には陸面過程モデルCHANGEと河川流路網モデルTRIP2を用いた。また、WFDEI(WATCH Forcing Data ERA-Interim)の気象データとGRDC(Global Runoff Data Center)の河川流出量データを用いた。
 1979年から2016年までの冬季の河川流出量のトレンド解析を行った結果、流域のほぼ全域で流出量が増加傾向にあることが確認できた。また、河川流出のインプットとして重要な正味降水量(降水量-蒸発散量)のトレンド解析を行った結果、夏季に増加傾向を示した。そこで、夏季の正味降水量と冬季の河川流出量のグリッド毎のラグ相関をとった結果、8月の正味降水量と冬季(12月~2月)の河川流出量の相関が高く、8月の降水量が冬季の河川流出量に寄与していることがわかった。次に、その要因を調べるために、夏季から秋季にかけて(6月~11月)の融解深と冬季の河川流出量のトレンドの関係性を見たところ、不連続永久凍土帯(レナ川上流域)のレナ川近傍においてのみ、夏季から秋季にかけての融解深と冬季の河川流出量のトレンドに正の相関が見られた。この理由として、不連続永久凍土帯のレナ川近傍では活動層内の地下水(凍土上地下水)が河川につながりやすく、冬季であっても地下水が河川に流出しやすいことが考えられた。その不連続永久凍土帯における正味降水量と冬季の河川流出量のトレンドの関係を確認したところ、夏季の正味降水量が冬季の河川流出量の増加に寄与する可能性とともに、地下氷融解水の寄与の可能性も見出された。
 今後は、表面流出・基底流出と融解深との関係を確認していきたい。