第9回PAWCs月例オンラインセミナー

日 時
2021年3月3日(水) 10:30〜12:00

発表者
永野博彦(名古屋大学宇宙地球環境研究所)

題 目
湿潤イベントによる撹乱の程度が異なる北方カラマツ林では正規化植生指数の長期変化傾向も異なる

要 旨
北半球の高緯度生態系では、正規化植生指数(NDVI)の上昇ないし減少傾向が数多く報告されている一方、統計的に有意な上昇・減少傾向を示さない高緯度生態系も多く存在している。本研究では、東シベリアの湿潤イベントに伴う撹乱を受けたカラマツ林(Spasskaya Pad)と撹乱を受けていないカラマツ林(Elgeeii)を対象に、MODISで観測された2000年から2019年までのNDVIの時系列変化を解析した。Elgeeiiでは、5月および6月-8月のNDVIが有意な上昇傾向を示したが、Spasskaya Padではいずれの季節のNDVIも有意な変化傾向を示さなかった。さらに、NDVIと気温・降水量との関係を2つの森林で比較すると、ElgeeiiのNDVIは気温と降水量に強く影響されていたが、Spasskaya PadのNDVIは気温や降水量と明確な関係性を示さなかった。以上より、NDVIの長期変化傾向が統計的に有意でない生態系であっても、撹乱などにより生態系の構造や機能は大きく変化しており、明確な変化傾向を示す生態系とは環境応答も大きく異なっている可能性が示唆された。