第11回PAWCs月例オンラインセミナー

日 時
2021年5月12日(水) 10:30〜12:00

発表者
田代悠人(東京農工大学 連合農学研究科)(現:名古屋大学 宇宙地球環境研究所)

題 目
衛星データを用いたアムール川中流域における永久凍土湿地の空間分布推定および河川溶存鉄濃度に対する重要性

要 旨
 世界でも有数の豊かな海として知られるオホーツク海の生態系は、アムール川がもたらす溶存鉄によって大きく支えられている。しかしながら、アムール川流域内における溶存鉄の供給源や挙動に関する知見は不足しており、特に永久凍土が存在する中上流域に関してはほとんど理解されていない。本発表では、アムール中流域において溶存鉄供給源と考えられる永久凍土湿地(ロシア語でMariと呼ばれる)の空間分布を現地調査とLandsatデータ解析によって推定し、この湿地の空間分布と河川の溶存鉄濃度との関係性を調べた結果について報告する。
 7月のLandsatデータを解析した結果、現地で永久凍土湿地Mariの存在を確認した場所のNDVIは0.376~0.442、NDSIは0.376~0.411の範囲にあり、森林や氾濫原が示した範囲とは明らかに異なっていた。この結果を調査地一帯に外挿し(これらの範囲を満たす場所を湿地Mariと判別)、湿地の空間分布図を作成した。さらに、現地で溶存鉄濃度を調べた24河川の流域内の湿地面積率を求めた結果、湿地面積率が高いほど溶存鉄濃度が上昇する正の相関が見出された。この結果は、アムール中流域において永久凍土と共に成立する湿地Mariがアムール川への重要な溶存鉄供給源であることを示すだけでなく、将来的な永久凍土融解がこの地域の河川溶存鉄濃度に影響することを示唆する。