第12回PAWCs月例オンラインセミナー

日 時
2021年6月2日(水) 10:30〜12:00

発表者
近藤雅征(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)

題 目
陸域炭素収支の現状と今後の行方:亜寒帯と熱帯の役割

要 旨
 化石燃料の燃焼やセメント生成などの人間活動により大気に排出されるCO2は今日の気候変動の主要な原因である。人為起源のCO2排出量は、産業革命以降、増加の一途を辿っている。特に1960年以降の増加は顕著であり、2010年のCO2 排出量は1960年当時の約5倍にまで達した。CO2 排出量の増加が加速する中、主要各国は1997年の京都議定書、2015年のパリ協定においてCO2 を含む温室効果ガスの削減目標を掲げたが、具体的な成果は未だ見られない。
 大気中のCO2 濃度は、過去60年で約100 ppm増加しており、これは人為的なCO2 の排出によってもたらされた結果である。しかし、同時に、自然界よって緩和された結果としても捉えることができる。これは、人為的に排出されたCO2 のうち、大気に貯留するのは4割ほどで、残りが陸域と海洋に吸収されているからである。過去60年間の活発な人間活動と並行し、大気-陸域間、大気-海洋間の自然相互作用は、CO2 の吸収を促すかのように変動してきた。大気中のCO2 濃度の増加に伴い、陸域では森林や低木植物による光合成活動が活発化し、海洋表層では大気とのCO2 濃度差が卓越し、海水へのCO2 の溶解が促進された。その結果、陸域・海洋への正味のCO2 吸収量は1960年から2009年の間に2倍ほど増加したと報告されている。更に、最近の大気観測の研究によると、大気中のCO2 濃度の増加率(CO2 Growth Rate)は2000年以降に安定の兆しを示している。これらの結果は、CO2 濃度変動における陸域と海洋の役割が、近年、一層重要になってきたことを示唆している。
 本研究では、陸域における炭素収支が吸収に向けて増加している原因について、まず、現状解明されている主要なプロセスについて解説する。次に、全球規模の炭素吸収量の増加現象において亜寒帯と熱帯がこれまでどのような貢献をしてきたのかについて解説すると共に、今後起こりうるこれらの地域におけるCO2 吸排出トレンドの逆転現象について考察を行う。