第13回PAWCs月例オンラインセミナー

日 時
2021年7月7日(水) 10:30〜12:00

発表者
飯島慈裕(三重大学 生物資源学研究科)

題 目
北極域植生地図素材の紹介と植生変化域マップ作成の指針

要 旨
 ロシアならびに環北極域における、公開されているGISベースの植生地図について、その特徴を調べた。ロシア北方林では、2012年のロシア全土における若齢林(樹齢27年未満の森林)の分布とその推定林齢を500mの解像度(MODISとLANDSATを使用)を示した森林分布図(Distribution of Young Forests and Estimated Stand Age across Russia, 2012)がある。これは、森林火災等の森林かく乱と、その後の森林回復状況を示す図として参照できる。また、ロシアの55か所の解析地域について、LANDSATによる30m解像度でのかく乱状況地図(Russian Boreal Forest Disturbance Maps Derived from Landsat Imagery, 1984-2000)が作られている。これは1984~2000年の2時期以上での変化域を地図化してものであるが、限られた年ごとの比較結果であるため、解像度の割に情報がやや乏しい。環北極では、タイガ―ツンドラエコトーン図(Tree Canopy Cover for the Circumpolar Taiga-Tundra Ecotone: 2000-2005)が作られている。これは60~70°Nの2000~2005年平均の500m MODIS Vegetation Continuous Fields (VCF)による樹冠被覆率からエコトーンのパッチ位置を区分した図であり、今後の地域的な植生変化域として森林の北上傾向を検討する上での参照データとして有用と考えらえる。2010年以降の情報を加えた北極域全体をカバーした使える植生変化域地図はいまだ無いようである。PANGEAにはCentinal-1による植生高データなどがあるが、アラスカやシベリアの限られた地域の図があるのみである。また、北極評議会傘下の北極動植物相保全作業部会(CAFF)は、ツンドラ植生図(Circumpolar Arctic Vegetation Map)や植生データをまとめたArctic Vegetation Archive (AVA)を公開しているが、北方林まで含めた統合的な植生変化情報としてはまとめられていない。
 衛星データを利用した北極域の植生変化域マップの作成案としては、SAR衛星による水域変化の抽出と連動させた高分解能(10m)の変化域の検出が有効であると考える。北方林からツンドラにかけての植生変化は、湖沼の形成と消滅や洪水履歴などの水文環境変化と強く連動するためである。この時間分解能は、衛星データに基づく場合は10年程度ごとが妥当といえる。これまでに、レナ川中流域での2007年~2017年のALOSシリーズのHH偏波の後方散乱強度画像から、森林かく乱域、回復域、水域拡大域、縮小域等の高分解能の検出の可能性が示されている。これをベースとして、低解像度画像(例えばAMSR-2の植生水分量等)とのデータフュージョンによって、広域化を図るなどの検討が必要と考えられる。