日 時
2021年11月10日(水) 10:30〜12:00
発表者
岡崎翌見(北海道大学大学院環境科学院)
題 目
モンゴルハンガイ山脈周辺における湧水枯渇の現状
要 旨
北半球の永久凍土帯における気温上昇や降水量の変化に同調して、近年、北東ユーラシアの永久凍土帯南限域に位置するモンゴルでは、湧水の枯渇やその流出量の減少が顕在化している。湧水由来の水資源の喪失は、草原生態系だけでなく遊牧など人々の生業にも大きな影響を与えるため、その現況を把握することは重要である。
モンゴル中央部のハンガイ山脈周辺にて1960-70年代に記載された湧水が現在も湧出し続けているか、すでに枯渇してしまったかを現地調査(2019年夏)と空中写真判読によって調べた。現地では120地点の現況を確認した。空中写真では計1548地点での湧水現況を判読したが、画像の撮影時期や解像度にばらつきがあるため、多くの地点でこの判読結果には不確実性が残った。そこで、現地調査や空中写真判読によって湧水の現況を明瞭に確認できた計264地点を用い、機械学習(ロジスティック回帰分析、ランダムフォレスト、SVM)によって、湧水枯渇とそれに関わる環境因子との関係を学習させモデル化することで、ハンガイ山脈全域における湧水の現況を予測した。
3つのモデルの性能に大きな差はみられず、ROC-AUCの値は最高で0.78となった。全モデルの予測を考慮した結果、ハンガイ山脈周辺では約2割が現在枯渇している状態であることが示された。また、山脈の北東部において現在も活動している湧水が多く、西部のザウハン地区で枯渇傾向があることが示された。この結果は、予測する際に最も重要度の高かった特徴量がNDVIであったことから、植物が生育しにくい乾燥帯や高標高地域で、湧水が枯渇する傾向が示されたためと考えられる。
今後は、説明変数を増やすなど、モデルの精度をより向上させることで、ハンガイ山脈における湧水の現況をさらに正確に示すインベントリーの作成を目指したい。
