日 時
2023年5月10日(水) 10:30〜12:00
発表者
田代 悠人(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)
題 目
コリマ川における長期の河川水質変動:気象データ解析から示唆されるエドマ融解の可能性
要 旨
温暖化による永久凍土融解は、凍土内物質の可動化や流出経路の深層化を引き起こし、河川流域の物質循環に大きく影響する。例えばアラスカのユーコン川やカナダのマッケンジー川ではCa濃度がここ数十年で増加傾向にあり、流域内の永久凍土融解が主な原因ではないかと推測されている。しかし現存する長期の河川水質データのほとんどは河口付近で得られたものであり、広大な流域内の「どの領域の」永久凍土融解に起因するのか特定することは困難である。そこで本研究ではコリマ川流域を対象に、河川水質変動だけでなく流域内の気温と降水量変動についても解析し、両者の相関を調べることで、水質変動に大きく関わる要因と場所を特定することを試みた。解析期間は1980-2020年とし、用いた河川水質データはGEMStatおよびArcticGROにて公開されている河口付近のCa, Mg, SO4, アルカリ度の濃度である。コリマ川のCa, Mg, SO4の年平均濃度は有意な増加傾向を示し、さらに月毎の濃度変化に注目すると、7月から10月の濃度増加が顕著であった。さらにCa, Mg, SO4の年々変動と流域内の気温および降水量の年々変動との相関を調べたところ、水質変動はエドマが多量に存在するコリマ低地の気温の変動と最も高い相関係数を示した。この結果は、コリマ川河口付近におけるCa, Mg, SO4の濃度増加にコリマ低地のエドマ融解が大きく関与していることを示唆する。考察では支流の水質データや、コリマ低地における土壌の鉱物含有量、サーモカルスト湖の増減など本研究に関わる先行研究をいくつか紹介し、エドマ融解とコリマ川のCa, Mg, SO4濃度増加の妥当性について議論する。
